2020年3月10日、私たち温泉山荘だいこんの花メンバーで宮城県川崎町のワイナリー「Fattoria AL FIORE」を訪問しました。
「Fattoria AL FIORE」さんとの出会いは約1年前になるでしょうか。
温泉山荘だいこんの花がある宮城県蔵王町のお隣、川崎町で面白いワイン造りを行っているワイナリーがあると聞きつけ、醸造されたワインを取り扱いさせていただいたのがそもそもの始まり。
本当はもっともっと早くワイナリーを訪ねたかったのですが、どうせなら何かしらのお手伝いをしたいという思いと、本業(宿)の忙しさからなかなか行けずにおりました。
ところがです。
ほんの数日前に「Fattoria AL FIORE」さんがブドウの木を植えるお手伝いを募集していると耳にしたものですから、居てもたってもいられず、強硬スケジュールで押しかけて参りましたので、その時の様子を記事にしました。
集合場所に指定されたのは川崎町安達地区。
Google MAPを頼りに来てくださいと住所を教えていただきましたが、本当にこの道で会ってるのかなって何度も思ってしまうくらいの山の中。
でも、それ故に宮城県自然環境保全地域に指定されるほど自然環境豊かで、辿り着いたブドウ畑は、それはそれは気持ちの良い場所でした。
ブドウ畑では、「Fattoria AL FIORE」の方が待っていてくれました。
この土地のことや、ブドウ栽培の考え方や想いを丁寧に教えていただきました。
さて、いよいよブドウの木を植えます。と、言いたいところですが、この日の天気は残念なことに「雨」。そう、3月10日は全国的に荒れ模様で、「春の嵐になるでしょう」と天気予報でしきりに言われていた日です。
そういえば以前に他のワイナリーを訪ねた時も雨でした。
温泉山荘だいこんのメンバーの中の誰かが雨男(女)なんでしょうね。
あ~ぁ、こんな感じのブドウの苗木を植える予定だったんだけどなぁ。
でも雨ではしょうがない。これからどんどん雨が強くなる予報だし。
そんなしょんぼりしている私たちを見てか、「Fattoria AL FIORE」さんから嬉しい提案が!
「じゃ、今日は予定を変更してワイナリーに行きましょう」って。
もぅ、嬉しいやら、ありがたいやら、恐縮するやら、色んな想いが込み上げてきましたが、遠慮することが『不得意』な私たちはお言葉に甘えて急遽ワイナリーにお邪魔させていただくことにしました!
土砂降りの雨で「ブドウの木を植える」お手伝いの予定が急遽変更となり「Fattoria AL FIORE」さんのワイナリーを見せていただけることになった私たち温泉山荘だいこんの花メンバー。
先ほどのブドウ畑から車で約15分ほどでしょうか。教えていただいた場所がこちら。
!?
体育館!?
まぁ、私たちは約1年前からワインを購入するために訪ねていたので分かっていたのですが、初めて来たときはここがワイナリーとは思いませんでした。
実はこちら、2012年に廃校となった支倉小学校を地域の新たな拠点として生まれ変わらせた『イーレ!はせくら王国』と言う食と体験の観光交流施設。
その元・支倉小学校の体育館が「Fattoria AL FIORE」さんの本拠地なのです。
元・体育館であった建物の中は、リノベーションによって大きく3つのスペースに分かれており、そのうちの1か所には、ここで醸造された様々なワインが貯蔵されています。
もちろん、こちらでワインを購入することができますよ。
いわゆる一般的な酒販店で購入するのとは違って、醸した方々とコミュニケーションを取りながらワインを選べるのはワイナリーならではですよね。
私たちがこのスペースにお邪魔している間も多くの方が訪れて来て、そのお客様ひとりひとりと楽しそうにお話されている「Fattoria AL FIORE」スタッフの方々がとっても印象的でした。
次はワイナリーの心臓部「醸造スペース」です。
いやぁ~、そこまで見せていただけるとは思っていなかったのでドッキドキ!
窓の奥に見えるスペースがワインを醸造するスペースです。
ここから見ただけでも形や大きさの異なる様々なタンクが並んでいるのが分かります。
潜入して真っ先に目に飛び込んできたのが上の写真。
時計といい、校歌額といい、体育館として使われていた時の名残がそのままに大切にされています。
ここでワイン造りの想いをお話しいただきました。
「Fattoria AL FIORE」さんのワイン造りでは、一切の添加剤を加えません。
ワイナリーによって考え方は様々で、培養酵母や発酵を促すための乳酸菌などを添加するところもあるそうですが、「Fattoria AL FIORE」では基本的にブドウに付着している野生の酵母のみで発酵させます。また、温度管理に於いてもセオリー通りに機械や設備を使って強制的に温度を変えるようなことはしないそうです。
それは、それぞれのブドウが本来進みたい方向とかけ離れたワインにはしたくないという想いから。
驚きだったのは、どんなワインを造るかを決めてからブドウを仕入れるのではなく、ブドウが届いて、そのブドウを見て、味わってからどんなワインにするかを決めるということ。
これは私たちにとって衝撃でした。
衝撃は続きます。
こちら(上の写真)は何だと思いますか?
私たちは「味噌」でも仕込んでいるのかなって思いました。
正解は日本酒を仕込むときの酒樽です。
何故?ワイナリーに日本酒の酒樽があるの?って思いますよね。樽を作る職人さんも年々減少し、貴重な樽なのに。
こちらは本当に日本酒を造っている酒蔵さんから譲り受けたそうで、これからこの樽でワインを造ってみるんですって。
ワインの木樽と言えば、他の写真にもあるようにオークで出来ていて、それ故にワインの中にはオークの香りも含まれますが、こちらの酒樽の材質は日本古来の「杉」。
ワインに杉の香りが含まれるって、いったいどんな味わいになるんだろう。
勝手にワクワクが止まりません!
「どうぞ、試飲してみてください。」のご厚意にワクワクがピークに達した私たち。
やっぱり、遠慮することが『不得意』です。
スチューベンやデラウェアといったブドウ品種で醸したワインをいただきました。
私たちの表現で、このワインの美味しさを伝えきれないのは十分に承知していますが、そのブドウが持っていた味の「核」となっていた部分がワインに姿を変えたことで分かりやすくなっていました。
あぁ、このブドウの本質ってこの味だったんだって。
ブドウが届いて、味わってみてから、どんなワインにするかを決める「Fattoria AL FIORE」さんのワインだからそうなるんだと思うの。
「Fattoria AL FIORE」さんのご案内により充実の時間を過ごした私たち。
普通はこれにて終了!って思うでしょ。
いいえ、まだ続きます。
記事をご覧の皆さま、もう少しお付き合いください。
醸造スペースを見学させていただいた私たちが最後に案内されたこちらのスペース。
改めて言いますが、ここは元・体育館です。
長~いアンティークのテーブルが印象的なとってもオシャレな空間。
そのアンティークのテーブルにカトラリーが並べられて…。
もぅ。お分かりですね。
はいっ!その通り。
なんと「まかない」をいただいてしまいましたー!
再三に渡り言いますが、つくづく私たちは遠慮することが『不得意』だと思います。
「Fattoria AL FIORE」代表の目黒さんはもともとはイタリアンシェフ。
仙台市内で創作イタリア料理店「AL FIORE」をやられていたそうです。
2016年には、石巻と牡鹿半島で開催された国際芸術祭「Reborn Art Festival」のフードディレクター、食全般の統括責任者を担い、2017年に株式会社AL FIOREを設立されました。
通常、ワイナリーで食事の提供はしていませんので、本当の「まかない」をいただいてしまいましたー!
ありがとうございます!
「雨」のせいとは言え急遽予定を変更してワイナリーの見学をさせていただいた上に、ご飯までいただいてしまった私たち。
このままでは帰れません。
何か、お手伝いをさせていただけないでしょうか?
なんだったらお皿を洗います。(←私たちプロですし…。)
ということで、次はワイナリーのお手伝いです。
とっても美味しい「まかない」をいただいた私たち。
このまま、「ごちそうさまでしたー。」で帰るわけにはいきません。
『働かざる者、食うべからず』の精神でお手伝いをさせていただきました。
まぁ。食べてから働いたので順番が逆ですけど…。
そのお手伝いは、ワインのエチケット(ラベル)貼り。
機械の使い方をレクチャーしていただいたのですが、そのレクチャーの中でもワイン造りに対するこだわりを垣間見ました。
ボトルには僅かな凹凸があるから、凹凸を避けてエチケットを貼ったり、箱詰めするときも、エチケットが痛まないように箱の四隅に入れるワインには梱包材を巻いたりとか、造り上げたワインに対する愛情をここでも感じました。
僅かな時間で、少しのお役にも立てなかったかもしれません。
お手伝いどころか、貴重な経験をさせていただきました。
ワイン造りに対する想いや情熱、エチケット(ラベル)1枚とっても、そのワインが一番の状態で口にする方へ届けられるようどれだけの苦労と努力があるでしょうか。
私たち、温泉山荘だいこんの花は、「生産者」と「消費者」の間に位置する「提供者」の存在と思います。
「提供者」として私たちができることって何でしょう。
まず一つは、「生産者」の方が最適な状態で作り上げた商品を、最適な状態のまま「消費者」に届けることと思います。
「生産者」からバトンタッチしていただいた商品を、エチケット1枚とも汚すことなく提供する。
そしてもう一つ。
「生産者の想い」を「消費者に伝える」こと。
それを行う上で、今回の見学・体験は非常に貴重なものでした。
今回、「Fattoria AL FIORE」に伺ったのは、『ブドウの木を植える』ためだったんです。
それが、あいにくの悪天候により中止となり、「Fattoria AL FIORE」さんのご厚意により急遽、ワイナリーの見学となりました。
ブドウの木を植える経験なんて滅多にできることでは無いですから、予定通りであってもそれは貴重な経験となったでしょうが、結果としてそれ以上の経験をさせていただきました。
それは、ワイン造りの工程などを見ることができたっていうこともそうですが、それ以上に、「Fattoria AL FIORE」の皆さんの温かさをヒシヒシと感じたことです。ワインを造っているすべての方とコミュニケーションがとれました!
私たちが訪ねている間、お客さんは勿論のこと、一見するとワインとは関係なさそうなお仕事のお知り合いの方などもいらしゃって、このワイナリーにはなんでこんなに多様な方が集まってくるんだろうと不思議に思いました。
多分、年齢とか経歴とか些細なことにこだわらず、向かうべき方向性や志が合致すれば異業種であっても手と手を取り合う大らかさがあるんでしょうね。
それも「Fattoria AL FIORE」の皆さんの人柄があるからだと思います。
私たちも、そうでありたいと思いました。
「旅館」というカテゴリーにとらわれず、大袈裟化もしれませんが、地域のコミュニティの一つにでもなれれば嬉しいですね。
「Fattoria AL FIORE」の皆さん、貴重な“経験”&“まかない” ありがとうございました!
【Fattoria AL FIORE】
https://www.fattoriaalfiore.com/
宮城県柴田郡川崎町支倉塩沢9
9 Shiozawa, Hasekura, Kawasaki-machi Shibata-gun, Miyagi, 989-1507, Japan
+81(0)224-87-6896